クラフトビールの種類は多種多様ですが、その中でも小麦麦芽を使ったビールは、独特の香りと味わいが特徴です。
小麦麦芽とは、大麦麦芽とは異なる製法で作られる麦芽で、バナナやフルーツのような香り、まろやかな口当たりが特徴です。
この記事では、小麦麦芽を使ったビールの魅力や特徴、おすすめ銘柄をご紹介します。
小麦麦芽とは
小麦麦芽は、小麦の種子を発芽・乾燥させることで完成する、ビール製造に用いられる基本原料の一つです。
通常、ビール醸造について広く使われているのは大麦麦芽です。こちらはその名の通り、大麦の種子を使用して作られたものです。
現代の小麦麦芽を使用したビールスタイルの一つであるヴァイツェンは、ドイツで発展しました。ヴァイツェンはドイツ語で「小麦」という意味で、このビールスタイルは小麦麦芽の高い割合を特徴としています。
しかし、1516年にドイツでビール純粋令(Reinheitsgebot)が制定され、ビールの製造に大麦麦芽、水、ホップのみを使用することが義務付けられると、ドイツでの小麦麦芽を使用したビールの製造は規制され小麦のビールは衰退していきます。
再び小麦麦芽を使用したビールスタイルが注目され始めましたのは、近代のこと。世界大戦後のビール産業の拡大と共に、多くの地域で、ヴァイツェンを含む伝統的なスタイルが復興し、新しい小麦ビールのレシピが開発されました。
さらに20世紀後半から21世紀にかけて、クラフトビール作りの動きが世界中で広がり、小麦麦芽を使用したビールの多様化が進みました。特にアメリカやヨーロッパでは実験的なビール醸造が盛んになり、小麦麦芽を特徴とする多くの新しいビールスタイルが登場しています。
小麦を使用したビールのスタイル
一口に小麦麦芽を使用したビールと言っても、そのスタイルはさまざまです。ここでは、そのうち代表的なスタイルを5つ紹介していきます。。
1. ヴァイツェン(Weizen/Weissbier)
小麦のビールの歴史でも触れたヴァイツェンは、ドイツの伝統的なビールスタイルで、小麦麦芽の割合が高いのが特徴です。
このビールは一般に軽やかで爽やかな風味を持ち、バナナやクローブのような独特の香りを持つことが多いです。また、若干の酸味とクリーミーな口当たりが特徴的です。
2. ベルジャン・ホワイト(Belgian Witbier)
ベルジャン・ホワイトは、その名の通り、ベルギー産のビールで、小麦麦芽と未麦芽(発芽させずに乾燥させたもの)の小麦が使用されています。
オレンジの皮やコリアンダーなどのスパイスが加えられることが多く、フルーティでスパイシーな風味が特徴です。また、色味は濁りがあって、非常に爽やかな飲み口を持っていることが通常です。
3. アメリカン・ウィートエール
アメリカン・ウィートエールは、ベルジャン・ホワイトに似ていますが、よりフルーティでホップの風味が強いスタイルです。この風味は、スタイル名にもある通り、アメリカ産のホップ種を使用することによって生み出されています。
軽やかで爽やかな飲み口が特徴で、特に夏場に人気のあるスタイルです。
4. ヘーフェヴァイツェン(Hefeweizen)
ヘーフェヴァイツェンは、ヴァイツェンの一種で、酵母を濾過せずにボトルに詰めるスタイルです。このビールは、濁りがあり、バナナやクローブのような香りが特徴的です。
なお、「Hefe」はドイツ語で酵母を意味する言葉です。
5. ベルリーナー・ヴァイセ(Berliner Weisse)
ドイツ生まれのベルリーナー・ヴァイセは、酸味が特徴的な軽いビールです。
小麦麦芽とラクトバシラス(乳酸バクテリア)を使用し、その酸味と軽やかな風味が特徴です。しばしばフルーツシロップと一緒に提供されます。
名称は、「ベルリンの白ビール」を意味しています。
まとめ
小麦を使ったビールの中では、特にヴァイツェンが人気で、最近では小売店などで見かけることも多くなってきました。
ただ、ヴァイツェンを飲んだとのある方でも、小麦を使って作られているというイメージを持っている方は少数派なのではないでしょうか。
クラフトビールを飲む際には、その原料に注目してみると、その味わいをより深く知ることができるかもしれません。
ぜひ、大麦を使ったビールとの違いを感じつつ、味わってみてください。