2023年10月、酒税法の改正に伴い、ビール系飲料(ビール・発泡酒・第3のビール)にかかる酒税が変更されました。この法改正は変更は当然ながら、小売価格にも影響を与えています。
こうしたニュースを見つつも、「そもそも発泡酒や第3のビールって、ビールと何が違うんだっけ…?」といった印象をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そんなビール初心者に向けて、この記事では、ビール・発泡酒・第3のビールの違いについて詳しく解説していきます。
ビール・発泡酒・第3のビール、それぞれの定義
ビール・発泡酒・第3のビールという、いわゆるビール系飲料について、「味わいが違う」「値段が違う」といった印象を持たれている方は多いかと思います。
ただ厳密にいうと、ビール系飲料を区分しているのは、酒税法の定義です。
酒税法とは「酒類の製造、販売、輸出入、消費等に関する税制を定めることにより、酒類の健全な発達を図り、国民の健康の保護と社会の秩序の維持に寄与すること」を目的とした法律です。
この法律で、酒類は次の4種類に分類されています。
①発泡性酒類 | ビール、発泡酒、 その他の発泡性のある酒類でアルコール度数が11度未満のもの(第3のビール、チューハイなど) |
②醸造酒類 | 清酒、果実酒など |
③蒸留酒類 | 焼酎、ウイスキー、ブランデー、スピリッツなど |
④混成酒類 | 合成清酒、味醂、甘味果実酒、リキュールなど |
上の表にある通り、ビールや発泡酒、第3のビールといったビール系飲料は、酒税法上、発泡性酒類に分類されます。
発泡性酒類とは、その名の通り、発泡性のあるお酒のことです。ただし、発泡性のある酒であっても、たとえばスパークリングワインなどは「果実酒」として醸造種類に分類されるため、注意が必要です。
ビール系飲料が発泡性酒類に分類されることを踏まえた上で、ビールの定義を見ていきましょう。
ビールの定義
- 麦芽、ホップ及び水を原料として発酵させたもの
- 麦芽、ホップ、水及び麦その他の政令で定める物品を原料として発酵させたもの
のいずれかで
- 副原料の使用量が麦芽の重量の5%以下のもの
- アルコール度数が20度未満のもの
をどちらも満たす飲み物がビールと定義されています。
麦芽使用率ってどういうこと!?
麦芽使用率とは、ホップと水を除いた原料の質量中、麦芽が占める割合のことです。麦芽使用率が高いほど、ビールらしい味わいになります。
ビールの定義にある「政令で定める物品」とは!?
政府は、ビールに使える副原料(麦芽、ホップ、水以外の原料)として、次のものを定めています。
① 果実(果実を乾燥させ、若しくは煮つめたもの又は濃縮した果汁を含む。)
② コリアンダー又はその種
③ ビールに香り又は味を付けるために使用する次の物品
・ こしょう、シナモン、クローブ、さんしょうその他の香辛料又はその原料
・ カモミール、セージ、バジル、レモングラスその他のハーブ
・ かんしょ、かぼちゃその他の野菜(野菜を乾燥させ、又は煮つめたものを含む。)
・ そば又はごま ・ 蜂蜜その他の含糖質物、食塩又はみそ
・ 花又は茶、コーヒー、ココア若しくはこれらの調製品 ・ かき、こんぶ、わかめ又はかつお節
これらの副原料が使われていたとしても、その使用量が麦芽の重量の5%を上回ってしまうと、「本来の姿から大きく乖離した酒類になる」として、ビールとは認められません。
では、発泡酒の定義はどうなっているのでしょうか?
発泡酒の定義
・麦芽又は麦を原料の一部としたアルコール度数が20度未満の発泡性のある酒類
のうち、
・麦芽使用率が50%未満のもの
・副原料の使用量が麦芽の重量の5%を超えるもの
・ビールの製造に認められない原料を使用したもの
・麦芽を使用せず麦を原料の一部としたもの
のいずれかの条件を満たした飲み物が、発泡酒と定義されています。
第3のビールとは!?
酒税法上の定義はありませんが、ビール・発泡酒以外の発泡性酒類で、ビールに近い味わいを持ったものが「第3のビール」と呼ばれています。
クラフトビールは”ビールじゃない”ってホント!?
近頃、飲食店や小売店で目にする機会が増えてきたクラフトビール。
ビール好きな友人から「実はクラフトビールって、ビールじゃないんだよ」といった話を耳にした経験はありませんか?
これは、半分ホントで半分ウソ(真実ではない)と言えます。
クラフトビールは、従来のビールとは異なる味わいを出すため、副原料に工夫が凝らされているものが多いです。オレンジピールやシナモン、コリアンダーなど、その種類はブルワリーの求める味わいによって様々です。
そして、製法がビールと同じであっても、ブルワリーがより自社らしい味わいを求めて副原料に「政令で定める物品」以外のものを使用した場合、酒税法上は発泡酒と分類されます。
クラフトビールを楽しむなら、税法上の区分は気にせずに!
このように、クラフトビールの中には酒税法上、ビールに分類されるものと発泡酒に分類されるものがあります。
もちろん、これらはあくまでも税法上の区分ですので「発泡酒だからクラフトビールらしくないのでは」といった表現が当てはまらないことは言うまでもありません。
実際、国産クラフトビール・ブルワリーのパイオニアとして知られる、ヤッホーブルーイングの提供するクラフトビールの中にも、酒税法上、発泡酒であるものがあります。「水曜日のネコ」などが好例です。
ご自宅や友人の家、はたまたキャンプなどでクラフトビールを飲む際、ネタのひとつとして、ビールや発泡酒の定義についてお話しするのも楽しいかもしれませんね。