普段ビールを飲んでいても、その原料について深く学んだことのある方は少ないのではないでしょうか。原料の違いによって、出来上がるクラフトビールの味わいは大きく異なります。
この記事では、クラフトビールの原料の種類や特徴、原料の違いによる味わいの違いなどについて、わかりやすく説明します。
クラフトビールの原料
クラフトビールの原料は、大きく分けて次の5つに分類することができます。
- 麦芽
- ホップ
- 酵母
- 水
- 副原料
【クラフトビールの原料①】麦芽
麦芽は、クラフトビールの主原料で、大麦の種子を発芽させ、乾燥させたものです。糖分やビタミン、ミネラルなどを豊富に含んでることが特徴です。
クラフトビールの種類によって、使用する麦芽の種類や比率は異なります。主に使用される麦芽の種類としては、次のようなものがあります。
ピルスナー麦芽
クラフトビールの定番麦芽です。淡い色とフルーティーな香りが特徴で、ピルスナービールやペールエールなどの淡色ビールによく使用されます。
ヴァイツェン麦芽
黄色い色とフルーティーな香りが特徴です。製造時には小麦麦芽を50%以上使用するのが一般的で、ヴァイツェンビールやヘフエールなどの小麦ビールなどによく使用されます。
ブラウン麦芽
ブラウン麦芽は、茶色い色と香ばしい香りが特徴です。カラメル化酵素を多く含んでおり、ビールにコクと甘みを加えます。ブラウンエールやスタウトなどの黒色ビールによく使用されます。
黒麦芽
黒い色とコクのある味わいが特徴で、ロースト麦芽を多く含んでおり、ビールに強い苦味とコクを与えます。スタウトやポーターなどの黒色ビールに使用されるケースが多いです。
クラフトビールでは、これらの麦芽が単独で使用されることもあれば、複数の種類を組み合わせて使用されるケースもあります。
【クラフトビールの原料②】ホップ
ホップはつる植物の花穂で、クラフトビールの苦味と香りを与える原です。ホップには、苦味成分であるアルファ酸と、香り成分であるイソアミルアルコールやホップ油などが多く含まれています。
クラフトビールに主に使用されるホップの種類としては、次のようなものがあります。
アロマホップ
クラフトビールの香りづけに使用されるホップです。苦味成分の含有量が少なく、香り成分を多く含んでいます。ホップ由来のフルーティーな香り、柑橘系の香り、スパイシーな香りなどが特徴で、ペールエールやIPAなどのホップが香るビールによく使用されます。
フレーバーホップ
苦味と香りづけに使用されるホップです。アロマホップよりも苦味成分の含有量が多く、香り成分も含んでいます。このホップで作られたビールはフルーティな香り、柑橘系の香り、スパイシーな香りなどが楽しめます。主にIPAやスタウトなどのバランスの取れたビールに使用されています。
マルトホップ
苦味成分の含有量が多く、香り成分はほとんど含んでいません。ビールに強い苦味を与えるため、ペールエールやスタウトなどの苦味の強いビールによく使用されます。
ホップは味わいや香りだけでなく、ビールの保存性にも影響を与えます。これは、ホップに含まれるタンニンは、ビールの酸化を防ぐ働きがあるためです。そのため、ホップを多く使用したビールは、保存性が高くなります。
【クラフトビールの原料③】酵母
酵母は、糖分をアルコールと炭酸ガスに分解する微生物です。酵母の種類は、クラフトビールの味わいや香りに大きな影響を与えます。
クラフトビールに使用される酵母の種類としては、次の2つがあります。
エール酵母(上澄み酵母・上面発酵酵母)
エール酵母は、上面発酵酵母とも呼ばれ、上面に浮かんで発酵する酵母です。上澄み発酵酵母とも呼ばれます。
ホップの香り成分を分解する際に香り成分を生成すること、また、タンパク質を分解する際に、コクのある成分を生成することから、フルーティな香りとコクのあるビールを生み出すのが特徴です。ペールエールやIPAなどのエールビールなどによく使用されます。
一般的に15〜25℃で発酵させ、2週間〜3週間程度で発酵が完了します。
ラガー酵母(下澄み酵母・下面発酵酵母)
ラガー酵母は、下面発酵酵母とも呼ばれ、下面に沈んで発光する酵母です。下澄み発光酵母とも呼ばれます。
エール酵母と違って、香りやコク成分を生成しないため、すっきりした味わいのビールを生み出すのが特徴です。ピルスナービールやスタウトなどのラガービールなどによく使用されます。
一般的に8〜15℃で発酵させ、4週間〜6週間程度で発酵が完了します。
【クラフトビールの原料④】水
クラフトビール作りにおいて、水は次のような役割を果たします。
- 麦芽を糖化させるための溶媒
- ホップの苦味成分を抽出するための溶媒
- 酵母の栄養源
- ビールの味わいを形成する
クラフトビールの味わいは、水の硬度やミネラル分量によって大きく変化します。
硬度が高い水は、ビールの味わいにコクやボディを与え、硬度が低い水は、ビールの味わいをすっきりとさせます。
一方、ミネラル分(カルシウムやマグネシウム、ナトリウム)の量も、ビールの味わいに影響を与えます。カルシウムは、ビールの泡立ちをよくし、マグネシウムは、ビールの苦味を強くします。また、ナトリウムは、ビールの味わいを塩辛くします。
【クラフトビールの原料⑤】副原料
ここまでの4つの原料があればビール作りは可能ですが、さらに追加される副原料によって、クラフトビールはより複雑な味わいへと進化します。
クラフトビールに使用される副原料の種類としては、次のようなものがあります。
糖類
糖類は、ビールの糖分を増やし、甘味やコクをより引き出すために使用されます。
主に麦芽に含まれる糖分を多く使用しますが、果物や野菜などの糖分も使用されることがあります。
中には、人工甘味料を追加しているクラフトビールもあります。
香辛料
主にホップに含まれる香り成分に加えて、ジンジャーやシナモンなどの香辛料を加えることで、ビールに独特の風味や香り、個性的な味わいを与えることができます。
コリアンダーやシナモンなども、クラフトビール作りにはメジャーな副原料です。
なお、酒税法の定義においては、使用できる副原料は限定されています。酒税法の定義について詳しく知りたい方は、こちらの記事もご一読ください。
さらに詳しく知りたいという方は、国税庁のサイトもおすすめです。
原料にも注目することで、クラフトビールを飲むのがより楽しくなる!
ここまで、クラフトビールの原料について解説してきました。
クラフトビールを購入する際には、これらの原料にも注目してみると、自分好みの味わいや香りを知るための大きなヒントになるはずです。
原料を深掘りして、よりクラフトビール沼の奥深くへ踏み入ってみてはいかがでしょうか。